経営者の皆様、資金繰りに関するこんな疑問、ありませんか?
「毎月の資金残高は最低いくら必要なの?何か目安にできる数字はないの?」
その答えは、ズバリ、あります。
毎月の資金残高の必要最低額(ここでは最低キャッシュといいます)について、目安にできる数字はあります。
その目安の数字とは、
「赤字ではないという前提であれば、運転資金の直近3ヶ月の平均額×1.5」
です。
今回は、この最低キャッシュの目安について、次の順に説明していきます。
①なぜ赤字ではないという前提なのか?
②運転資金とは?
③直近3ヶ月の平均にする意味は?
④なぜ1.5倍するのか?
<資金繰りに関する前回までの記事はこちら>
利益が出るということは、お金の動くタイミングにズレがあっても、最終的にはお金は増加します。
利益は売上から費用を差し引いたものです。
売上はよほど特殊な事情のない限り、最終的に現金や預金として入ってきます。費用も減価償却費など一部例外はありますが、基本的に現金や預金から支出します。
したがって、利益が出ているということは、最終的に入ってくるお金の方が支払うお金よりも多いということですので、お金は増加します。
運転資金という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。実際に銀行からお金を借りるときも、申込書の目的欄に「運転資金」と記載したりしますからね。
運転資金とは、仕入れ代金を支払ってから売上入金があるまでの間に必要な資金のことです。
運転資金=在庫+売上債権-支払債務
もう少しわかりやすく説明すると、下の図になります。
なぜ直近3ヶ月の平均をとるかというと、仕入から製造、販売やサービスの提供、その後の代金回収といった営業活動は1ヶ月では完結せず、お金の動きの傾向を把握するには3ヶ月で見るのがバランスが取れているためです。
3ヶ月という期間をとっておくことで、売上入金や支払が2ヶ月後といった期間が長くなる取引をカバーすることができます。
また、3ヶ月という区切りは、春夏秋冬という区切りに近いところがあります。
3ヶ月という期間で把握することで、季節ごとの傾向を加味することができるようになります。
ただし、手形取引などを多用する建設業などの業種だと、6ヶ月平均で見ていく必要があります。
手形取引は、入金や出金の期日が90日から180日後となることが多いです。特に金額が大きくなると、180日としているところが多いです。
したがって、営業活動で生じるお金の動きを把握するためには、180日=6ヶ月の平均で見ていく必要があります。
1.5倍する理由は、お金の場合は利益と異なり、マイナスになった時点で終わり(倒産)だからです。
マイナスを回避するには、最低限の金額だけ残すのではなく、ある程度の余裕をもった金額の資金をとっておく必要があります。
ある程度の余裕をとっておくことで万が一の状況にも対応が可能となり、次に説明する「資金の谷」も乗り越えることができます。
日々の資金状況を見ていくと、売ってから入金までの期間と、仕入れてから支払うまでの期間ズレの関係で一気に資金が減少するタイミングがあります。
これを資金の谷と呼んでいます。
毎月の入金が各種支払より後になってしまったり、いくつもの支払の期日が同じ日になってしまったり、これらの条件が重なると「資金の谷」ができてしまいます。
例えば、各種経費の支払、仕入代金の支払、給与の振込が25日に集中し、まとまった入金がそれよりも後に来てしまう場合、下の図のように深い資金の谷ができてしまいます。
(注)25日に経費や仕入れ代金、給与支払が集中して一気にお金が減り、谷になっています。入金の集中日が経費の支払い集中日よりうしろになっていると谷が深くなってしまいます。
運転資金をぎりぎりにしか保有せずに営業していたら、資金の谷にあたるとき、万が一ほんの少し支払いが増えただけで資金がショートする可能性ができてしまいます。おそろしい。
こういった事態をさけるために、運転資金の3ヶ月平均額を1.5倍するのです。
資金繰りの原則は、キャッシュは多めに維持しておくことです。
最低キャッシュの額は、「赤字ではないという前提であれば、運転資金の直近3ヶ月の平均額×1.5」です。
お金を増やしていくには、利益を出すのが前提です。
運転資金についてきちんと理解し、自社の運転資金を把握することが必要です。そのうえで、最低3ヶ月間、業種によっては6ヶ月間の運転資金の平均額を算出します。
そして、資金の谷や万が一の状況に備えてゆとりを持つために、その平均額を1.5倍します。
最低キャッシュの目安額は個々の会社の状況によって異なるため、現状をきちんと把握して改善案を検討することが大切です。
税理士や経理に丸投げしないで一緒に考えましょう!!
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